2 発見

 若きベンジャミン・フランクリンは人生の目標として13の徳目を特定しました。そして1週間に1徳目ずつ、1つの徳目に年間で合計4週間取り組めるように設定しました。彼は、このシステムを用いることによりあらゆる活動においてさらに大きな充足感が得られるようになったと述べています。フランクリンと同じように今日でも、自分にとって最重要事項が何かを時間をかけて見定める人は、自分にとって真に重要な人や事物に時間を割く生活が実現できています。加えて、価値観を見定めるプロセスそのものが創造力をかき立て、あなたの職場や家族、自分自身についてのビジョンをさらに広げてくれるのです。フランクリン・プランナーはこうした生産的な内省のプロセスを促してくれます。

最重要事項を発見するには、価値観と役割とミッションを特定することから始めます。

2-1 価値観

 価値観はあなたがどのような質の生活に最も価値を置くかを反映したもので、次の問いへの答えとなるものです。「わたしが人生から真に得たいものは何だろうか。」「わたしが最も幸福を感じるのはどんな時だろうか。」「他の人が持っている特質の中で最も尊敬するものはどのようなものだろうか。」このような問いは一朝一夕で答えを出せるものではありません。時間をかけて深く考え、観察してください。プランナーの「価値観」のフォームは、あなたが人生で最も価値を置く事柄が何かを特定するために作成されました。「あなたの最も大切なこと」を探し見つめてみましょう。


2-2 価値観の明確化の実践

 ベンジャミン・フランクリンは計画のために3つのステップを用いました。それは価値観の発見から始まります。彼は最初に自分の価値観を特定し、優先順位をつけ、それに説明文をつけていきました。価値観と優先順位はしばしば同じ意味に用いられます。価値観は人生で最も大切なものだからです。しかし、ベンジャミン・フランクリンは価値観に順番をつけて、どの時期にどの価値観に集中するかを決めました。彼にとって優先順位は重要性の差ではなく、最も必要とする価値観に先に着手するものだったのです。

 自分の価値観を特定するには、最も優先するものは何かを見つけなくてはなりません。それは家族と時をともにすることでしょうか。そうであれば、価値観は家族にあるということになります。それとも、良い仕事をすることを何よりも大切に感じていますか。ならば、あなたの価値観は仕事にあることになります。また、約束に遅れないことを重要に考えているのであれば、価値観は時間を守ることにあります。このように、自分が何を優先しているかを考えながら、それにつながる価値観をブレーンストーミングで導き出してみましょう。以下の価値観の例を挙げておきます。

価値観の例‥‥
冒険心・本物志向・バランス・美・職業・思いやり・勇気・教育・健康・感謝・ユーモア・誠実・愛・忠誠・忍耐・尊敬・神仏を敬う心・チームワーク


 価値観が特定できたら、それを明確化する必要があります。その価値観に対するあなたの解釈は、もしかしたらほかの人の解釈とは違うかもしれません。例えば「誠実」という価値観についてあなたは「うそをつかないこと」と考えますが、「公私にわたり正直で信頼される人物であること」と考える人もいます。価値観を明確にすると、もっと現実味を帯びてきます。ですから、説明文を書くときには「わたしはこうである」、「わたしはこうする」など、肯定的な表現を使うようにしましょう。


2-3 役割

 重要事項を発見する次のステップは役割、つまり他の人とのあなたの関係や責任を吟味することです。役割の演習は、どれがあなたにとって重要でエネルギーを集中したい役割かを発見するのに役立ちます。役割を吟味することにより、人生は仕事やある特定の野心だけのために存在するものではないことが分かるのです。大切なのはバランスです。


2-4役割を特定する―実践

 役割とは「生活における責任分野」のことです。例えば多くの人が共通に持つ役割として「親」が挙げられます。親としての役割には、「子供のニーズを満たす」、「子供と一緒の時を過ごす」、「子供を行事に連れて行く」などが考えられます。これらはすべて「親」という役割の中にまとめることができます。分かりやすくするために、まとめられるものはすべてまとめて、役割の数は7つ以下にしましょう。4人の人の役割を下の方に例として挙げておきましたので参照してください。

 役割のページを使って役割のリストを作ってください。そして各役割において鍵となる人物を書き込みましょう。例えば「親」の場合、鍵となる人は「子供」です。最後に、その役割における理想の行動を説明文として付け加えます。「得意先担当課長」という役割であれば、説明文は「常に新たな顧客を獲得するとともに、最良のサービスと結果をもってその維持を図る」となるかもしれません。このようにして明確化ができたら、次のステップは、その中の一つか二つを毎週「一週間コンパス」に書き写すことです。

役割の例‥‥
人物1: 伴侶、保護者、ボランティア、従業員、自分自身
人物2: 妻/母、歯科医、PTAの会員、画家、自分自身
人物3: 友人、教会の指導者、講師、経理マネージャー、指導者、自分自身
人物4: 夫/父、マネージャー、コーチ、家の保守の担当、ボーイスカウトのリーダー、スポーツ選手、自分自身


2-5ミッション

 ミッションのページを利用して、「ミッション」の作成に取り組んでみましょう。価値観は他の人と共通するものが出てくるかもしれませんが、「ミッション」はあなた独自のものです。ミッション・ステートメントは価値観から自然に生まれるもので、あなたの生き方や貢献したいことについての個人的な考えを述べたものです。


2-6ミッションの実践

 あなたの生涯はどのようなストーリーになるでしょうか。あなたは時間と才能を何に使ってきましたか。ミッション・ステートメントは、絶えず変化し続ける環境や生活に影響を及ぼす感情の起伏の中でルートを示してくれる地図のようなもので、あなたにとって生活の規範となるものです。

 以下は他の人々のミッション・ステートメントの例です。一通り読んで、あなた自身のミッション・ステートメントを書くうえで参考にしてください。


ミッション・ステートメントの例 1
希望を燃やし、勇気を持ってビジョンを実行していくため、癒しの才能を使おう。

家庭においては、お互いの一番の友達になれるよう健全で愛情深い関係を築こう。

職場においては、常に学ぶ環境を作ろう。人生においては、自然の法則に沿った生き方をしていこう。

ミッション・ステートメントの例 2
自分から、そして自分にとって重要な人たちから、最良のものを引き出せるように行動しよう。特に、そう行動しないことが正当化されるときには。

ミッション・ステートメントの例 3
悪口などを言われても、決して気にしないようにしよう。

どんな人に対しても親切心と尊敬の気持ちを持って接しよう。

自分が大切にしているものを信じることによって、自分の本当にしたいことを探し出そう。

心の声に従った価値観や信念によって行動しよう。

他人に対して奉仕できるよう、知識を身につけ、みんなから尊敬を得ること、そして仕事においても積極的に行動する、ということを目標にしよう。

最後に、笑顔で人生を行き抜いていこう。